アスベストとは?

まえがき

 前回のコラムでは、土壌汚染を取り上げました。

今回は有害物質つながりで、今回はアスベストについて触れておかねばならないような使命感めいたものが、わいてきましたのがその理由です。

 先に有害物質と書きましたが、不動産取引に関するもので代表的なものでいいますと、土壌汚染、アスベスト、PCBの3つが主なものになります。他にはフロンガスも挙げられますが、あまり馴染みが薄いですね。

1.まずは定義から

定義

アスベスト(石綿)とは、天然に産出する繊維状ケイ酸塩鉱物の総称であり、蛇紋石系のクリソタイル(白石綿)と角閃石系のクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトの6種類があります。

国土交通省 アスベスト対策Q&A

 石綿という名称が、一般的な通り名として広く人口に膾炙しているかもしれません。昔に建てられた建物においては、使用されていることが多く、そのために健康被害が発症した事例が多く見受けられました。

アスベストによる疾患

アスベスト繊維を吸引することによって、石綿肺(じん肺の一種)、肺がん、悪性中皮腫などの疾患を発症する可能性があることが知られています。アスベスト関連疾患は、アスベストにばく露してから長い年月を経て発症します。 例えば、中皮腫は平均35年前後という長い潜伏期間の後発病することが多いとされています。

国土交通省 アスベスト対策Q&A

といわれております。
建物のうちで使用されている箇所は

アスベスト含有建材は、住宅や倉庫では外壁、屋根、軒裏等に成形板として、ビルや公共施設では梁・柱の耐火被覆、機械室等の天井・壁の吸音用等に吹付け材として使用されています。

国土交通省 アスベスト対策Q&A

鉄骨造建物に見られることがあり、筆者の経験の範囲でいえば、平成築(一桁年)でアスベスト使用していた建物もありました。エレベーター室によく見られます。

さて、宅建業法での取り扱いはこうなっております。

建物について、アスベスト使用の有無の調査結果が記録されている時は、その内容を重要事項説明として建物の購入者等に対して説明することを規定しています。下記のURLに関連情報があります。

宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令について(アスベスト調査、耐震診断に係る情報について重要事項説明に追加)

2.さまざまな法規制

 先ほどは宅建業法上の規制をあげさせていただきましたが、そもそも建築物の部材なので建築基準法は関係してきます。他にも大気汚染防止法(空気中を繊維上で浮遊するため)、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(略称:建設リサイクル法)、労働安全衛生法 石綿障害予防規則、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、住宅の品質確保の促進等に関する法律などなどあります。

 余談ながら、筆者の経験をご紹介いたします。

その背景となる建築基準法のアスベストに関する規制の変遷を下記に

平成18年に建築基準法が改正され、吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウール(含有率が0.1%を超えるもの)が規制対象となり、新たに建築する建築物への使用が禁止になりました。また、平成18年以前に建築された建築物においても、増改築等を行う場合は除去等(一定規模以下の場合は封じ込め又は囲い込みを許容)が必要となります。

 前職の勤務先おいて、平成17年以前に取得した建物がありました。当時のアスベストの含有率は1%基準でした。で、アスベスト含有率判定は“シロ”。

やがて、時は経って平成18年以降のとある日の事。0.1%基準施行後で保有物件のアスベスト検査を行いましたら、検査結果は“クロ”。つまり当時の調査機関の判定では基準がかわっているので、含有率が0.1%から1.0%の範囲であれば、シロからクロへと変化する事は十分に考えられます。

 ですが、当時ある関係者の方には、ご理解いただけず当方がアスベスト含有しているのを知っていながら、嘘をついていたとたいそうご立腹をされたことがありました。

 基準が変わったんですけどねぇ~。

結局誤解は解けませんでした。いやぁ、難儀な話でした。

法規制は、時の経過に伴い変わります。一般的にいえば緩いほうから厳しいほうに変わっていくのが多いです。逆はそうそうありません。ご留意ください。

3.判別する方法

 ちょうど、いいページがありました。

Q7 アスベストは、建築物等ではどのように使用されているのでしょうか?
1 設計図書により確認
建築物を施工した業者に問い合わせ、設計図書(建築時の施工図・材料表等)で確認します。

建築時等の情報がない場合は、目視での確認や吹付けアスベストが規制された年代と建築年次、使用されている用途などにより類推する方法があります。吹付けアスベストの施工時期の目安は次のとおりです。
(1) 吹付け石綿:昭和50年まで
(2) 石綿含有吹付けロックウール:昭和55年まで(湿式工法は昭和63年まで)
(3) その他の石綿含有吹付け材:昭和63年まで
※ 吹付けロックウール、その他の吹付け材については、一部、平成7年まで1%を超える石綿含有材料が生産(東京都調査による。)

2 分析により確認
また、分析により確認する場合は、個人の負担(数万円)となります。壁や天井の吹付け材にアスベストが含まれているか検査を行う機関は、下記のとおりです。
詳細は、石綿協会等のホームページ(外部サイトへリンクhttp://www.jaasc.or.jp/(外部サイト))をご覧ください。

なお、借家・マンションにお住まいの方は、建物の管理者等にご確認ください。
【都内の検査機関の紹介】
・(社)日本石綿協会
・(社)日本環境測定分析協会(https://www.jemca.or.jp/)(電話:03-3878-2811)
・(社)日本作業環境測定協会精度管理センター(https://www.jawe.or.jp/
(電話:03-5625-4280)

東京都環境局

 建物の竣工年次を確認することと、設計図書から使用資材を確認するぐらいは、取り組み可能だと思われますが、それから先のサンプリング採取の成分調査は専門機関にお願いすることになりそうですね。

あとがき

 アスベストについては、あまり馴染みがない方が多かったかも、知れません。鉄骨造の建物は、意外とアスベストが使用されていたりするのでご留意ください。

<了>